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「あっ…」 電車の中、自分の立っているのとは向かい側の扉が開くのを眺めていると、見覚えのある顔が見えた。向こうも気付いていたようで、同じくらいの長さの声を漏らしている。立希だ。 気付いていなければ、敢えてこちらから話しかける理由もない。ただ、こうもはっきり気付いていて話しかけずにいるのも変だ。拒む理由もないのだから。 「お久しぶりです。立希」 「祥子さ、最近ムジカどうなの？」 「あの後も色々ありましたが、幸い今は平穏ですわ。」 本当に色々あった。悪いことも、良いことも。 「睦の事でも巻き込んでしまいましたわね。ごめんなさい。」 「そんなんじゃないから。それに今もムジカやってるんでしょ。謝る意味ある？」 心の隅に残った罪悪感からの謝罪は受け取られなかった。立希らしくもあるが。 |
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