「そ、そよちゃん。助けてくれてありがとう……」
「気にしないで。私が近くにいただけだから」
　燈ちゃん、またこけてた。不注意というか、目の前のことしか見えてないよね。結構付き合い長いはずなのに、気がつくまで時間かかっちゃった。
「ただ気をつけてね。大怪我しちゃうよ」
「け、怪我……あっ、そういえば、祥ちゃんと出会った時も……」
「祥ちゃんと……？　どんなことがあったの？」
「えっと、歩道橋で……花を、取ろうとして……」
　歩道橋……燈ちゃん家のそばのかな。
「そしたら、祥ちゃんに、つき飛ばされて……死のうとした、とか……」
　……燈ちゃんのことだから、結構危ないことしてたんだろうな。身を乗り出してたとか。
「もしかして、さっきも別のこと考えてた？」
「あ、うん。書きかけの、歌詞……」
「はぁ……やっぱり。私、これからライブの時は、燈ちゃんの手、握っておこうかな」
「あ、うん……！　えっと、そよちゃん、いつもありがとう」
　燈ちゃんを隣で助けたり、背中を支えたりするような資格は、私にはない。音楽だって、私にはそこまで思い入れがない。私にできるのは手を離さないことだけ。これくらいなら、私にもできるから。